No.8  SDGsで自社の将来を考えてみる

更新日:2022.5.20

この2年強、新型コロナウイルスの影響は、我が国のような先進国のみならず、世界の中でも貧しい国、途上国と呼ばれる国々にとっては、さらに厳しいものとなっています。パンデミックが広がる以前から深刻であった貧困や感染症の問題は、これらの国・地域の人々を直撃し、一気に生活の危機、生命の危機に晒しています。 また、ロシアのウクライナ侵攻のニュースを見聞きするたびに、人々の生命の危機と平和維持の重要性について今まで以上に感じていらっしゃるのではないかと思います。

このように我々を取り巻く社会・経済環境は、従前の対応レベルではできない、変わらなければいけない現実と向きあっています。「VUCAな時代」(Volatility:激動・Uncertainty:不確実・Complexity:複雑・Ambiguity:曖昧)に突入しているとも言えます。その一方、AI、IoT(Internet of Things)、IoE(Internet of everything) などによって業務の効率化、あるいはそれ以上の新しいビジネス環境が生まれてきています。このような時代だからこそ‶人の価値″に焦点が当てられるようにもなっています。人だからこそ生み出せる付加価値や社会貢献、そんなことが語られるようになってきました。

皆さまも、最近よく「SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)」といった言葉を耳にされるかと思います。この「SDGs」は、2015年9月の国連サミットの「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された2016年から2030年までの国際目標です。この「SDGs」は国連加盟国193ヵ国が合意し、持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲット・232のインディケーターから構成されています。

ここで「SDGs」が生まれた背景を考えてみましょう。地球環境は、もはや気候変動ではなく気候危機であると考えます。地球の気温は2100年までに3度前後の上昇が予想され、現時点での過酷な環境に覆われている居住不可能地域は地球の陸地の0.8%。2070年までに地球表面の19%に拡大し、35億人に影響が及ぶと言われています。このような〝消滅可能性″が高まり、「MDGs(ミレニアム開発目標)」そして「SDGs」が誕生したのです。「MDGs」は途上国問題が中心でしたが、「SDGs」は、全世界が対象となっており、人間社会、地球、経済発展、平和、パートナーシップを統合。「SDGs」の基本理念は、「誰一人取り残さない(Leave no one behind)」との包摂性(ほうせつせい:social inclusion) が中心となっています。

この「SDGs」に関して、日本企業のほとんどは、まだまだ社会的責任(CSR)としての取組みや、コミュニケーションツールとしての活用にとどまっているレベルと言えます。2030年の「SDGs」達成に向けて企業ができること、やるべきことはイノベーションであり、新たな価値を提供することです。「SDGs」は、2030年までの世界の「あるべき姿」を示しています。「今できること」の 延長線上に将来を予測するのではなく、この将来の「あるべき姿」に対して「今何をすべきか」を考える「バックキャスティング思考」が必要です。「SDGs」が示す将来の世界のあり方とは何か、そこからバックキャストして描ける道筋はどうか、そのために必要となる投資やイノベーションは何か。単に既存事業に「SDGs」のラベルを貼ることによる現状肯定ではなく、「SDGs」という「未来志向」のツールを活用して、自社の強みは何かを改めて見直したり、「SDGs」 に示された課題を解決できる自社の潜在能力に気づくことができる絶好のチャンスととらえることができるかと思います。自社の戦略をより一層磨き上げることが求められます。これまで誰も取り組んでこなかった社会課題に経営者がどのように取り組むかが「SDGs経営」の本質です。

「SDGs」はすでにビジネスの「世界共通言語」になりつつあります。また、最近は「SDGsネイティブ」と呼ばれる世代が、ミレニアム世代からZ世代、そして幼児にまで広がっています。このような若い世代が10年後、20年後には社会人になります。その時に自社が選ばれる企業となっているか考え、行動すべき時代が来たものと思います。 このように自社自身が持続可能な企業となるために、今の社会のニーズだけでなく、将来のニーズも満たすような事業展開を考え、「SDGs」を掲げた企業経営によって持続可能な企業へと発展しようではありませんか。

株式会社KAZコンサルティング 代表取締役社長
一般社団法人日本経営士会 代表理事
一般財団法人RINRI SDGs推進協議会 代表理事
一般社団法人エコステージ協会 全国&東京地区理事
鈴木 和男

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